大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)1126号 判決 1951年2月20日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人堀田英一上告趣意は末尾に添附した別紙記載の通りである。

第一点について。

被告人が昭和二二年政令第一六五号第一条第一項に違反して連合国占領軍の所有財産を不法に買受けてこれを所持する場合においてその財産が賍物であり、しかもその財産が賍物たるの情を知りながら買受けたとすれば右政令違反の罪と賍物故買罪とが成立し刑法第五四条一項の前段にいう一個の行為にして数個の罪名に触れる場合に該当すると解すべきである、そして右政令違反行為たる不法所持と不法収受行為とは一罪をなすものであるから不法所持について公訴が提起された場合は其効果は不法収受にも及ぶものといわなければならない、従って不法所持について公訴を提起した本件においては其効果は不法所持を為すに至った収受行為たる賍物故買行為にも及ぶものと解しなければならないから重ねて賍物故買行為について公訴を提起すれば、公訴のあった事件について更に同一裁判所に公訴を提起したときに当るわけであるが記録を調べて見るに昭和二三年五月六日附追公判請求書と題する書面は先きに本件について提出した昭和二三年四月二三日附公判請求書とは別個の公訴を提起したものではなく、先きに提出した公判請求書の内容を補充する書面にすぎないと認めるを相当とする。原審においても所論昭和二三年五月六日附追公判請求書と題する書面は、先きに提出された公判請求書を補充した趣旨であって別個の公訴を提起したものではないと解し、これについて公訴棄却の判決をしなかったものと認め得る、従って原判決には所論の如き違法はなく、論旨は理由がない。

第二点について。

連続した数個の行為にして同一の罪名に触れる場合は連続犯を構成するのであるから所論ガソリンを買受けた相手方が異ったとしても連続した数個の行為である以上連続犯が成立することは多言を要しない、そして連続した行為の一部について公訴が提起されれば、起訴の効果は不可分的にその全部に及び、検事が摘示しない部分についても審理裁判を為し得べきものであること勿論である、従って論旨は理由がない。

第三点について。

原判決挙示の証拠により所論知情の点を認め得るし、右認定については何等法則に違背するところはないから論旨は理由がない。

よって旧刑訴四四六条により主文の通り判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例